この記事を書いた人
はり師・きゅう師(国家資格) 整骨院勤務15年の現役鍼灸師パパ。 肩こり・腰痛・産後ケアを専門に、のべ数千名を施術。 現在は0歳の息子を育てながら、リアルな育児体験をもとに情報発信中。
息子が生後2ヶ月を過ぎたころ、抱っこしようとして左手首に激痛が走りました。
「あ、これ腱鞘炎だ」と瞬時にわかりました。整骨院で何百人も診てきた、あの痛みです。
でも、わかっていても動揺しました。抱っこができない。息子を持ち上げられない。そして翌日、整骨院で患者さんに施術しようとして、さらに気づきました。
「仕事もできない」
鍼灸師として体の知識はあるのに、自分の腱鞘炎は防げなかった。正直、かなりショックでした。
育児中の腱鞘炎は、パパにも起こります。そして「知っているのになる」ものです。
腱鞘炎にはいくつか種類がありますが、育児中に多いのが「ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)」です。
手首の親指側にある腱(長母指外転筋腱・短母指伸筋腱)が、腱鞘(けんしょう=腱を包むトンネル)との間で摩擦を起こし、炎症が生じます。親指を動かしたり手首を動かしたりするたびに痛む、という特徴があります。
赤ちゃんの頭を支えて抱き上げる動作、授乳中の姿勢保持、沐浴での体支え。これらはすべて「手首を曲げて、親指側に負担をかける」動きです。これを1日に何十回も繰り返すわけですから、腱鞘炎になっても不思議ではありません。
自分がドケルバン病かどうかを簡単に確認できる方法があります。
このとき、手首の親指側に強い痛みが走る場合はドケルバン病の可能性が高いです。
ただし、このテストはあくまで目安です。痛みが強い、しびれがある、親指の動きが制限されているなどの場合は、整形外科での診断を受けることをおすすめします。
ドケルバン病は、繰り返しの動作と過負荷によって引き起こされます。
育児中は特に次のような状況が重なりやすいです。
「気づかないうちに」進行していることが多いのも特徴です。最初は少し違和感がある程度で、放置しているうちに痛みが強くなっていくケースがほとんどです。
痛みが強い・熱感がある・腫れているときは、まずアイシングです。
腫れや熱感がなくなってきたら、温めて血行を促しましょう。蒸しタオルや温かいお湯での手浴が効果的です。お灸も慢性期の腱鞘炎には有効です。
親指と手首を固定することで、腱への摩擦を減らせます。
私自身が一番効果を感じたのが、サポーターでした。
整骨院で使っている医療用の手首サポーターを、仕事中も抱っこ中もほぼ1日中つけていました。「固定して動かさない」これだけで、みるみる痛みが落ち着いてきました。
市販品でも十分効果はあります。ポイントは親指と手首を一緒に固定できるタイプを選ぶこと。手首だけ固定するタイプだと、ドケルバン病には少し物足りないことがあります。
完全に固定してしまうと他の筋肉が弱くなることがあるため、日中の育児中だけ使用して、夜間は外すのがおすすめです。
炎症が落ち着いてきたら、ストレッチを取り入れましょう。
手首の回旋ストレッチ
親指の伸展ストレッチ
手の甲の親指と人差し指の骨が合わさるあたり。親指と人差し指を合わせたときに盛り上がる部分の頂点です。反対の手の親指でやや強めに10〜15秒押してみてください。鍼灸では「万能のツボ」として知られており、手首・手の痛み全般に効果があります。
親指を立てたとき(グッドサインのポーズ)に手首にできるくぼみです。腱鞘炎・手首の痛みに直接効くツボで、合谷と組み合わせて押すとより効果的です。反対の親指でやさしく10〜20秒押します。
痛みが強いときは鍼を打つことで、炎症を鎮め腱鞘周囲の血流を改善する効果が期待できます。
私は回復期に、自分で合谷と陽渓に鍼を打ちました。
鍼灸師が自分に施術するのは実は珍しいことで、「先生が自分に打つんですか?」と患者さんによく驚かれます。でもあのときは迷いませんでした。それだけ痛くて、それだけ早く治したかった。
鍼を打った翌日、明らかに動きが楽になりました。ツボへの刺激が炎症を鎮め、血流を改善する。教科書で知っていたことが、自分の体で証明された瞬間でした。
ツボ押しでも同じ場所を刺激できます。道具も要らないので、ぜひ試してみてください。
以下のような状態が続く場合は、整形外科や専門の医療機関への受診をおすすめします。
放置して重症化すると、腱が断裂するケースもゼロではありません。早めに専門家に相談することが大切です。
生後2ヶ月で腱鞘炎になり、抱っこも仕事もできなくなった私が、今こうして息子を抱っこできているのは、早めにサポーターをつけて、自分に鍼を打ったからです。
「鍼灸師なんだから体のことはわかってる」そう思っていたのに、なった。
だから言えます。知識があっても、育児の負荷はそれを超えてきます。「おかしいな」と思ったら、早めにケアしてください。
親が体を壊すと、赤ちゃんのお世話に支障が出ます。自分の体を守ることが、育児を続けるための一番の基本です。
→ 肩こりが同時につらい方はこちら:育児中の肩こり・首こりのセルフケア
Q. 腱鞘炎は放置してもいい?
A. 放置すると慢性化して治りにくくなります。悪化すると腱が断裂するケースもゼロではありません。早めのケアが回復を早めます。
Q. テーピングは効果がありますか?
A. 有効です。特に抱っこ時の手首固定テーピングは痛みを大幅に軽減します。毎日巻き直すのが面倒な場合は、薬局で購入できるサポーターが手軽です。
Q. 注射(ステロイド)は必要ですか?
A. 重症の場合は有効ですが、まずは安静・アイシング・温熱・ストレッチで様子を見ましょう。1〜2週間改善しない場合は整形外科への相談をおすすめします。
整骨院勤務15年・鍼灸師パパより
「こんなケアが効いた」「いつ頃から痛み出した」など、体験談をコメントで聞かせてもらえると参考になります。パパからの体験談も大歓迎です。
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